交通事故で年次有給休暇を利用したら休業損害は減る?

交通事故で年次有給休暇を利用したら休業損害は減る?

Question福岡県久留米市に住む国家公務員です。交通事故にあい、病院に通うため会社を休んだ際、年次有給休暇を3日利用しました。
だから、その3日分の減収はありませんが、受け取れる休業損害には何か影響しますか?

Answer

年次有給休暇は労働者にとって休日以外でもお金を受け取りながら仕事を休めるという権利ですから、年次有給休暇は財産的価値を有する権利に該当します。

    事故の治療のために年次有給休暇を使ったということは、そのときには収入の低下はなくても、本来、労働者が自分の意思で自由に利用できたのに、この治療のために費やした結果、今後、自分の意思でその年次有給休暇の枠を利用しようとしてもその分は欠勤扱いになり、収入の減額につながります。

 結果、年次有給休暇を利用しないで欠勤したため減収を招いた場合との均衡上、その年次有給休暇の価値(具体的には、労働基準法に即して算定された1日あたりの平均賃金単価×使った年次有給休暇の日数分)にみあう財産的損害が発生したとして、年次有給休暇の価値相当額を加害者に損害賠償請求できると考える裁判例が多いようです(東京地裁1994/10/7交民集27巻5号1388頁、大阪地裁1998/7/3交民集31巻4号1012頁、大阪地裁2001/11/30交民集34巻6号1567頁、大阪地裁2008/9/8交民集41巻5号1210頁、神戸地裁2001/1/17交民集34巻1号23頁、東京地裁2002/8/30交民集35巻4号1419頁、京都地裁2011/2/1交民集44巻1号187頁ほか)。

 年次有給休暇の価値相当額つまり平均賃金単価は、以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数で割って算出します、その間にもらった賞与は勘案しません(労基法12条1項4項)。

 ちなみに、国家公務員には、年次休暇以外病気休暇・特別休暇・介護休暇という制度があります(一般職休暇法16条以下)。
  介護休暇は無給ですが(一般職休暇法20条3項)、病気休暇と特別休暇は有給です(一般職給与法15条反対解釈)。
 この病気休暇について、年次有給休暇と同様に補償の対象となるという裁判例と(名古屋地裁2010/7/2判時2094号87頁)、補償の対象とならないという裁判例(福岡地裁小倉支部2013/5/31自保ジ1904号10頁)に分かれていますが、筋から考えると前者が正しいのではないでしょうか。

 あと、私企業には法律上の年次有給休暇のほか、未消化のまま時効が到来した年次有給休暇を一定期間積立保有できる積立休暇という制度が創設されていることがあります。
 例えば、業務外の疾病・家族の傷病のために連続して1週間休む必要がある場合、年次有給休暇に先立って消化するようにと、社内規程が設けられていたりします。
 交通事故で積立休暇を消化した場合休業損害の補償対象になるのかですけれども、積立休暇は法律上の制度ではないものの自分や家族が私病に仮にかかった場面で減給を回避して利用できるはずの枠が減ってしまうという意味で積立休暇に財産価値がないとはいえないので、補償対象になると考えるのが妥当なのではないでしょうか(福岡地判小倉支部2015/12/16自保ジ1981号90頁)。

 ついでに、振替休日をとって休日に仕事をして平日に通院した場合、もともとその休日の部分は無給ですから、補てん対象となる財産的損害が発生していないということで、休業損害の補償対象にはならないと考えられます。
 とはいえ、本来なら自由に利用できる休日を治療のために費やしてしまったという点では交通事故により不利益を被ったといえるので、慰謝料算定の際に斟酌してもらうという考えも一理あるのではないでしょうか。

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