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交通事故で被害者は刑事裁判にどう参加できる?

  • 更新日:2017.3.22
  • 投稿日:2016.4.24

交通事故で被害者は刑事裁判にどう参加できる?

Question

福岡県古賀市に住んでおります。私の妻が交通事故で亡くなり、加害者の刑事裁判がはじまろうとしています。加害者はお通夜とお葬式に顔を出しただけで、それから手紙も電話もなく、家族はとても腹立たしいです気持でいっぱいです。
刑事裁判で加害者にうらみつらみを直接述べたいのですが、どうすればよいのでしょうか?

Answer

 従来、交通事故に限らず犯罪被害者が、刑事裁判に直接参加することは許されていず、法廷を傍聴することしかできませんでした。
 しかし、光市母子殺害事件などをきっかけに、犯罪被害者がないがしろにされてはいけないという世論の盛り上がりを経て、平成20年から被害者参加制度が法律で導入されたのです。
 なお、害者参加は権利であって義務ではないので、行使するかどうかは被害者の自由です。加害者の顔を見るのも嫌だと思う被害者も少なくないはずで、全てを検察官に任せて出廷しないということを選択しても一向に構いません。

1、交通事故における対象犯罪
危険運転致死傷罪・自動車運転過失致死傷罪・業務上過失致死傷罪

2、交通事故における利用可能者
①被害者本人②被害者の法定代理人(例:被害者が未成年の場合の両親)③被害者本人が亡くなったり心身に重大な被害が発生した場合の配偶者・直系親族・兄弟姉妹など。

3、被害者参加手続の利用方法
加害者が起訴された後、検察官に被害者参加制度の利用を申し出ます。
(福岡の場合、検察庁に被害者参加申出書を提出し、裁判所の参加許可を受けた後、弁護士と連署で委託届出書を裁判所に提出する手続を踏みます)。
なお、加害者が起訴されたかどうかは、警察の被害者連絡制度、もしくは、検察の被害者通知制度を利用して被害者や遺族は書面連絡を受けることができます。
刑事事件の裁判所が制度利用申し出を許可することで、被害者として刑事手続に参加できる状態が生まれます。

4、被害者参加制度により参加者が実行可能なこと
刑事公判への出席=刑訴法316条の34
参加者は法廷で検察官の横に座ることができます。例えば、判決期日を決める際にも、法律家だけに話を聞いて決めるのではなく、被害者の意見も聞いて決めたりするようです。

参加者は、察官に、有罪無罪を決める犯罪事実に関するこういう質問をしてほしいなど意見を述べることができます。刑訴法316条の35
検察官がその意見に従う義務はないのですけれども、その場合にはなぜその意見に従わないのか検察官は参加者に説明をしなければなりませんので、無下に斥けられることは無いでしょう。

第1回公判前に刑事記録を事前に閲覧・謄写できます。刑訴法316条の35

参加者自ら、証人に尋問することができます。刑訴法316条の36
ただし、人に対しては有罪無罪を決める犯罪事実に関する事項の質問権はなく、専ら刑の量刑を決める情状に関する事柄の質問にとどまります。

参加者自ら、被告人に質問することができます。刑訴法316条の37
④と異なり、被告人に対しては犯罪事実に関する事項の質問権も付与されています。 そのほか、加害者の誠意の有無など刑の量刑を決める情状に関する事柄の質問もすることもできます。

検察官の論告求刑と別に、参加者自ら論告求刑を意見申述の形で開陳できます(刑訴法316条の38)。
そのほか、被害心情を裁判官に述べる意見陳述の機会も付与されています(刑訴法
292条の2)。 後者は参加者本人が行うことが多いです。

 参加者はこれらの行為を弁護士に依頼して代わりにやってもらうことができます。民事事件を依頼された場合、私がお引き受けすることはむろん可能です
 というのが、実際に被害者参加制度を利用するにあたっては、検察官との刑事公判に備えての綿密な協議が要りますので、弁護士の助力を得る方が望ましいでしょう。
 なお、被告人に下された判決に不満が残る場合、参加人には控訴権はありませんけれども、《犯罪被害者等の権利利益の尊重について(使命通達)~最高検企第436号2014/10/21》に、検察官に上訴に関する説明を尽したり意見聴取を被害者から行うなどの配意を励行することが言明されています。

5、被害者参加手続の効果
 刑事公判において、被害者の存在感は思いのほか大きいと言われています。
 審理の進め方も通常の裁判に比べて丁寧に行うことを裁判官も検察官も意識しがちになるようです(例:判決の言い渡しの際に、被告人に向けての説示にとどまらず、参加者に向けてもなぜそういう量刑に至ったかをことさら説明してくれたりする)。
 特に被害者本人が亡くなっている場合には、安易に加害者の言い分ばかりに沿った形で刑事手続が進められないようチェック機能が働くメリットが指摘されています。

 他方、刑事裁判の終了後に刑事事件を担当した裁判官がそのまま迅速に損害賠償の金額を命じる損害賠償命令制度は、原則として過失犯の交通事故では利用できません。なぜなら、損害賠償命令制度は故意の犯罪に限定されているからです。
 従って、交通事故における、損害賠償という民事問題は、被害者参加制度を利用した場合でも、刑事裁判とは別の形で進めないといけません
 ただし、被害者参加手続により収拾した情報(例:加害者に法廷で反省の態度が見えなかったなど)は民事問題にも流用できるので、依然被害者参加手続を利用する効果は軽くはないといえるでしょう。
 司法統計によれば交通事故をめぐる刑事裁判での被害者参加手続の利用率は3%程度のようです。

 交通事故(人身被害)に遭われ、損害賠償と並行して、刑事公判の被害者参加制度を利用したいがどう進めるのがよいか自信が無いときは、ぜひとも豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご依頼ください。

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