まず、交通事故裁判の件数だけが、ほかの一般民事事件と異なり、着実に増加していることが紹介されていました(4年連続で前年比2割増しが常態)。

 それに比例して、裁判期間は6ヶ月以内に終了が20%、6ヶ月~1年以内に終了が43%と、ほぼ6割の交通事故裁判が1年以内に終結するものの、残り4割は1年を超える審理期間になっています。

 交通事故裁判では、医療記録や刑事記録の取り寄せ手続と取り寄せた記録の分析や顧問医など損保会社が委託する外部専門家による意見書作成に数ヶ月要することが普通なので、審理期間が一般民事事件と異なり長期に伸びがちであるとのことです。

 他方、交通事故裁判の終結の形は判決が20%であるのに対し和解が70%(そのほかは取り下げなどもあるそうです)と和解終結率が一般民事に比べ高いと紹介されていました。

 その理由として、争点が定型化していること、被告となった加害者側に損害保険が付され回収不能のリスクが低いこと、赤本や青本や別冊判タといった解決基準が広く普及していること、この3点が挙げられていました。

 2016年の協議会では、裁判所として結論を出さない形で、交通事故裁判における被害者側弁護士の問題意識が取り上げられていました。

 弁護士菅藤が協議会の中で発言した部分もありますが、交通事故裁判が被害者側弁護士にとって現状より少しでも利用しやすい形態に進歩していくことを望みます。

1、医療記録の取り寄せが争点に直結するか否か別として、機械的に損保会社から申し立てられて機械的に取り寄せ申請が採用されているきらいがなくもない。
 医学的観点が明確な争点となっていない場面での送付嘱託申立は却下する運用を採用すべきではないか

2、損保会社の顧問医の意見書が安易に証拠採用されている実情について医師法24条との関係を問題視する被害者側弁護士もいる。
 公平な鑑定医の利用促進を図ったり、主治医への書面尋問を行った後にその内容に対する医学的意見に言及する限度で、意見書の提出を許容する運用をすべきではないか。
 せめて意見書を書く医師の氏名を意見書を提出する前に明らかにすべきではないか

3、和解を承諾するか判決にするかは、短期決着を望むかという時間のみの問題でない。
 控訴審で変化するリスクはないか、証人尋問を実施した場合に心証形成が変化するリスクはないか、死亡慰謝料を算定する際に汲んだ事情が単なる基準だからという発想を超えて納得できる形で示されているか、などさまざまな要素が絡んでいる。
 裁判所は和解決着を勧めたいのならその点を意識して勧試すべきでないか

4、後遺症慰謝料についても後遺障害の認定等級のみに拘泥すべきでない。
 例えば、諸外国では残存箇所の数や利き腕か否かを金額認定要素に組み込んでいることから、他事案とのバランスに終始せず、特別な事情の立証がなされたときは基準を超えた金額を躊躇せず認定すべきではないか

 なお「交通損害賠償における実務の現状」なる交通事故裁判を頻繁に取り扱う裁判官同士の座談会が判タ1346号4頁に掲載されています。今後も交通事故裁判に専門的に携わる弁護士として有用な情報を積極的にお伝えしていきます。