飛び石による車両損害を先行車両に賠償請求するのは非常に困難

 路上で車両を運転している最中に、先行車両が後輪で踏んだ飛び石が跳ね上がって、後行車両のボンネットやフロントガラスにあたりヒビが入る事故はたまに起きます。特に先行車両がダンプカーやトラックなど大型車両が高速道路を走行している場合には石にかかる圧も大きい分、当たる勢いもかなり強かったりします。
 そんなとき、後行車両には全く非がないし、石を跳ねさせたのはまさしく眼前にいた先行車両なのだから、修理費は先行車両が支払うべきだと考えるのは当然のことでしょう。

 しかし、特別の事情がない限り、先行車両に賠償義務を課すのは法律上無理なようです。飛び石でなく路上に置いていた木片を踏んだため木片が跳ねたケースが神戸地判2016/9/20交民集49巻5号1147頁で実際に問題になりました。
 後行車両は「先行車両には、路上に落下物があれば、十分に減速しこれをタイヤで踏みつけ跳ね上げることを回避する注意義務が課せられている。路上の落下物を認識しながら漫然と踏みつけて巻き上げる行動には予見義務違反がある。十分に減速したり車線変更すれば、木片を跳ねあがらせることを回避することも可能であった」と主張しました。

 しかし、裁判所は「たとえ先行車両が進路前方に散乱する木片を視認することが可能であったとしても、故意に木片を踏みつけようと進行したわけでなく、木片を踏めば多少木片が移動することは予見できたとしても、高く跳ねあがって後行車両に損傷を与えることまで予見することは困難である。従って、予見可能性はなかった。」「後続車が近くにいる状況で先行車両が木片を視認して急に減速することはかえって追突事故を引き起こす危険がある行動である。(さらに、当該事件では車線変更により回避することもかえってほかの車線の走行車両と接触事故を引き起こす危険があったと指摘したうえで)回避可能性はなかった」と説示して、先行車両には過失がないと賠償義務を否定しました。
 
 そもそも、跳ね上がるほどの小石なり木片ということは大した大きさではなかったと推察されます。車道を走行する際に、そのような路上の落下物が跳ねあがらないように注意しながら走行する義務を課してしまっては、著しく道路の円滑な通行を妨げる事態を招来する、非現実的な要請にあたります。裁判所の結論にはこのような価値判断も背景にあるでしょう。
 
 加えていえば、飛び石で後行車両が損傷した際に、飛び石を跳ね上げさせた原因がまさしく先行車両であったことを証明するにはドライブレコーダーの画像も必須です。なぜなら、一般に先行車両の運転手は飛び石が跳ねあがったことすら自覚がないことがほとんどだからです。
 
 結論として、飛び石による修理費用は車両保険を使うなどで後行車両が自己負担するしかないのが実情です。飛び石被害の場合、車両保険の等級ダウンは1等級で済むことが多いです。