福岡の交通事故に強い弁護士から自転車に乗る人と歩行者に向けて

   神戸地裁2013/7/4自保ジ1902号1頁で、小学5年生が運転する自転車に散歩途中ではねられて、頭がい骨を折って意識不明のまま寝たきりになった高齢者の女性に対し、その男の子の母親に9520万円の支払を命じた判決が出ました。

また大阪地裁2013/7/3で、赤信号を無視して交差点に自転車で進入し、バイクと衝突してバイク運転の高齢者が死亡した事故で、19歳少年に禁固1年執行猶予3年の有罪判決を言い渡した判決が出ました。

    自転車は自動車と違って運転免許が要らない、子どもから大人まで気軽に使える乗り物ですけれども、事故で甚大な被害が発生することもあって、いま日本交通法学会でも自転車事故の特集を組むほど注目が集まっています

平成23年版交通統計によりますと、自転車による加害事故は年間で2万2000件に及んでおり、自転車加害者の過失トップ3は、安全運転義務違反(例:歩道を注意不足のまま走行)が51・5%、一時停止違反が19・5%、赤信号無視が9・6%という報告があがっています。

    自転車の運転者に高額賠償が課された事例を幾つか紹介します
・自転車の運転者が、夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行して交差点に進入した際、横断歩道を歩行中の被害者と衝突し、被害者は3日後に死亡。自転車の過失を100%と認定し、加害者に6665万円の賠償義務を課した(東京地裁2003/9/30自保ジ1534号23頁)。

・自転車の運転者が赤信号を無視して高速で交差点に進入し、横断歩道を青信号歩行中の被害者と衝突し、被害者は11日後に死亡。加害者に5438万円の賠償義務を課した(東京地裁2007/4/11自保ジ1710号21頁)。

・自転車を運転する男子高校生が、赤信号を無視して交差点の横断歩道を自転車で横断中、その交差点に黄信号で進入したバイク運転中の被害者と衝突し、頭蓋内損傷で被害者は13日後に死亡。自転車とバイクの過失割合を8:2と判定して加害者に4043万円の賠償義務を課した(東京地裁2005/9/14自保ジ1627号14頁)。

・歩道を歩行中の77歳女性が、夜間スピードを出した脇見運転の自転車に衝突され、被害者には2級3号の高次脳機能障害が残った。加害者の過失を100%とし4853万円の賠償義務を課した(大阪地裁2011/7/26自保ジ1864号46頁)。

    神戸地裁の案件の特徴は、自転車を運転していた未成年者本人のみならず、母親にも指導監督の不徹底を理由に賠償義務が課されていることです。

   自転車は自動車と異なり被害者救済のための保険加入が強制されていません。ですから、自転車事故を起こし甚大な被害を起こした場合、保険が無ければ加害者は自己負担で賠償金を捻出しなければならず、自宅を手放したり給与を差し押さえられるなど、生活の基盤が根底から破壊されることにつながります。
それに神戸地裁の案件のように、親自身が自転車を安全に運転していようとも、子どもが安全に運転していなければ、子どもが起こした自転車事故の賠償を、親が予期せぬ形で負担しなければなりません。

  家族が自転車を運転する場合、損害賠償に備えるためには、個人賠償責任保険に加入しておくべきです。
個人賠償責任保険は、過失で他人に怪我をさせたり他人のモノを壊したりして法律上の賠償責任が発生した場合に支払われる保険です。

  個人賠償責任保険は損保会社で単独商品として取り扱っているほか、自動車保険や火災保険に特約として付保されている場合があります。
しかし、特約として付されていると思っていたら実は付されていなかったという勘違いも珍しくないので家族が自転車に乗る家庭は、すぐに自分がいま加入している保険を調べて、もし付されていなければ今すぐにでも個人賠償責任保険単体でも加入を申し込むべきでしょう。個人賠償責任保険が無ければ被害者も加害者もどっちも不幸になります。

他方、自転車には強制保険が無い分、被害者はあてられ損というか加害者に賠償請求しようにも加害者は無資力という、泣き面に蜂という事態になる可能性も自動車事故に比べてはるかに高いということになります
ところで、神戸地裁の案件では被害者は先に損保会社から6000万円を受け取ることができました。これはどういうことかというと、被害者の同居の家族が自動車の人身傷害保険に加入していたのです

    人身傷害保険というのは、人身事故に遭った場合、自分が加入している損保会社から、損保会社の約款に即して傷害保険金を支払ってもらえるというものです。
人身傷害保険金は加害者との示談成立を待たずに支払ってもらえるので、たとえ加害者が無保険であっても治療費の負担などの心配がなくなるのです。

  ところで、人身傷害保険もまた、全ての保険会社が商品名は一緒でも、同一の補償範囲というわけではありません
例えば、自動車保険の契約対象とした自動車に搭乗中の人身事故だけ補償するという補償範囲がごく狭いものもあります。保険料が安い自動車保険の場合、そういう限定補償になっていることが目につきます。
ですから、自転車事故被害にあって泣き面に蜂とならぬよう、家族がいま加入している自動車保険を調べて、人身傷害保険に加入しているか、加入しているとしてもその補償範囲は自転車事故被害にも及ぶのかを調べて、家計が許せば自転車事故被害にも対応できる保険内容に変更すべきでしょう。