PTSDの診断基準ICD-10とDSM-Ⅳの要約

   PTSDとは、post traumatic stress disorderの略語で、日本語では心的外傷後ストレス障害という病名で呼ばれています。

もともとはアメリカで、ベトナム戦争からの復帰兵や災害に遭ったり虐待を受けた被害者が、そのトラウマが一向に取り去れず、社会復帰や日常生活に支障を来たしたことで、注目され始めた精神疾患です。

日本でも、阪神大震災、地下鉄サリン事件、JR福知山線脱線事故、東日本大震災などで多くのPTSD被害者が生まれたと話題になりました。   そして、賠償実務では、一般に交通事故で、被害者に後遺症として補償対象となるPTSDが発生することがあるのかをめぐって複数の判例が蓄積され、活発に議論されてきました。

   今回はPTSDの存否に関する医学的な診断基準である、第1、DSM-Ⅳ(米国精神医学会で採用)と、第2、ICD-10(WHOで採用)の2つを紹介します。

 

第1、DSM-Ⅳ(A~Fの全てを充足すること)
A:以下の2条件を備えた外傷的出来事を体験したことがある。
1、実際に死亡したり重傷を負ったりするような、あるいは、危うくそのような
目に遭いそうな出来事を、あるいは、自分や他人の身体が損なわれる
ような危機状況を、体験ないし目撃したか、そうした出来事や状況に
直面した。
2、当人が、強い恐怖心や無力感や戦慄を示す。

B:外傷的な出来事が次のいずれかの形で繰り返し再体験される。
1、その出来事の記憶が、イメージや考えや知覚などの形をとって、
追い払おうとしても繰り返し襲ってくる。
2、その出来事が登場する悪夢を繰り返し見る。
3、あたかもその出来事が繰り返されているかのように行動したり、
感じたりする(再体験の錯覚・幻覚や解離性フラッシュバックも含む)。
4、その出来事の一面を象徴するような、あるいは、似通った内的外的
刺激に直面した時に、強い心理的苦痛が起こる
5、その出来事の一面を象徴するような、あるいは、似通った内的外的
刺激に対して、生理的な反応が起きる。

C:当該外傷に関係する刺激を執拗に避け、全般的な反応性の麻痺が
執拗に続く状態が
、その外傷を受ける前はなかったのに、以下の

  3項目以上で見受けられる
1、その外傷に関係する思考や感情や会話を避けようとする。
2、その外傷を思い起こさせる行動や場所や人物を避けようとする。
3、その外傷の要所が思い出せない。
4、重要な行動に対する関心や、その行動への関わりが著しく減少した。
5、他社に対する関心が無くなったり、他社と疎遠になった感じがする。
6、愛情を抱くことができないなど感情の幅が狭まった感じをいだく。
7、出世や結婚や子供や長生きを期待しなくなるなど、未来の奥行きが
狭まった感じをいだく。

D:高い覚醒亢進を示す症状が、その外傷を受ける前はなかったのに、
   以下の2項目以上で執拗に持続する。
1、入眠が難しい、睡眠状態の持続が難しい。
2、激しやすく、怒りの爆発がある。
3、集中が困難になっている。
4、警戒心が過度に見受けられるようになった。
5、驚愕する反応が極端である。

E:上記のB~Dの症状が1カ月以上続く
※症状の持続期間が3か月未満の時を急性・3か月以上の時を慢性と呼び、
また、発症と出来事が6か月以上間隔がある時を発症遅延型と呼ぶ。

F:それら障害のため、社会的職業的に、あるいはその他の重要な方面で、
    著しい苦痛や機能不全が臨床現場に現れている。

第2、ICD-10(①~⑧の全てを充足すること。ただし①②③が独立して
項目立てされている意義は、弁護士からみればやや不明瞭な感じ
がします)
①自ら生死にかかわる事件に遭遇したり、他人の瀕死の状態や死を目撃
した体験などの、破局的ストレス状況に暴露された事実がある。
②自分が危うく死ぬ、重傷を負うかもしれないという体験の存在
③通常では体験しえないような出来事
④途中覚醒など、神経が高ぶった状態が続く
⑤被害当時の記憶が無意識のうちによみがえる。
⑥被害を忘れようと感情が麻痺する、そのために回避の行動をとる。
⑦外傷の出来事から1か月後も持続。しかし、遅くとも6か月以内の発症
⑧脳内に器質的精神障害は存在しない。

 

現在の裁判例の傾向としては、一般の交通事故では、第1のA基準、あるいは、第2の①(~③基準)を充足していないという理由で、後遺症として補償対象となるPTSDの発症を認めることには、かなり消極的なようです。

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