過去の免停歴や罰金歴を慰謝料の増額理由にできる?

Question

 夜に国道3号線の右側車線をバイクで直進して信号機のない交差点を通過しようとしていたとき、前方の左側車線を走行していたクルマが合図なしで転回を開始したため、避けきれずクルマにぶつかって右上腕骨近位端骨折などの怪我をこうむり、右肩関節の可動域制限という後遺症が残りました。
 警察の調べで、クルマの運転手はこの交通事故の1年半前にも、人身事故を起こして60日間の免許停止の行政処分と30万円の罰金刑を受けていたことが判明しました。
 にもかかわらず、今回も転回禁止場所で転回するという走行ルールを無視する暴挙に踏み切っており、誰の目からも懲りない人物というほかありません。
 私に過失がないのは当然として、こんな悪質な運転の被害者となったわけですから、通常のケースに比べて慰謝料を割り増しで支払ってもらいたいのですが?
 

Answer

 昭和61年の小林和明裁判官の交通事故赤本講演録では、加害者にひき逃げ・無免許運転・酒酔い運転・信号無視などの故意に匹敵する重過失がある場面では、慰謝料の割り増しに異論はないだろうと指摘されています。
 そう扱うべき理由として、加害者が故意重過失によって交通事故を引き起こした場合、被害者が激しい憤りを感じ、加害者に対する厳しい制裁を期待することは当然であって、
それがゆえに被害者の憤怒や怨恨を消去軽減する目的で支払われる慰謝料算定にあたっても、その事情を汲んでしかるべきと説明されています。

 ところで、Qのような加害者の事情が、慰謝料割増理由に含まれるかどうかが、東京地裁2006/11/27自保ジ1715号15頁で争われたことがあります。
 裁判官は、特に理由を示さず、当該交通事故の1年半前に免停処分歴と罰金歴があったことは直ちに慰謝料増額理由には該当しないと説示しました。

 推測ですが、ひき逃げや無免許運転や酒酔い運転や信号無視という違法行為がなされた瞬間はまさに当該交通事故自体と時間的に近接し密接な関係がうかがわれるため慰謝料を増額するのが当然であると評価したのに対し、1年半前の免停歴や罰金刑歴は、普段から交通ルールを順守しない人物であることをうかがわせる意味は持っていても、時間的に当該交通事故との密接な関係につながるものではないので慰謝料増額の根拠とするには弱いと解釈されたのかもしれません。

 ただ感覚的には、いくら過去の出来事といっても、当該交通事故との時間間隔やその過去の違反の程度によっては、慰謝料増額要素として斟酌することがむしろ妥当ではないかと感じるところもあります。

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