雪で凍結した高速道路上で起きた玉突き事故の過失割合は?

Question

 夫Cは北九州市戸畑区で、水道管工事の自営をしています。雪が積もったある冬の夕方、大分方面の九州自動車道は路面が凍結し前方の見通しは50m程度と極めて悪く、制限速度50km規制となっていました。

雪の日は玉突き事故が起きやすいのですが、スリップして自損事故を起こしたA車が高速道路上の車体の後ろ半分を第1車線上にはみ出す格好で停止させるという第1事故が起こりました。A車の運転手は、第1事故後に非常点滅灯は点けたものの、三角形の停止表示板は設置していなかったとのことです。 A車が停止した5分後に、時速50kmで第2車線を走行中のB車が、第2車線から第1車線に車線変更した際、第1車線の半分をA車両が塞いでいるのに気付き、急ブレーキをかけたところスリップして、高速道路上に停止中のA車に追突し走行車線をB車が完全にふさぐ第2事故が起こりました。

 夫Cは走行車線を時速60kmで第1車線を走行していたのですが、第2事故の3分後に、高速道路上に停止していたB車に気づくのが遅れ、気づくのが遅れ、夫の運転するC車がB車に追突する玉突き事故が発生し、夫はこの第3事故で死亡してしまいました。

 A車がスリップして第1事故を起こさなければ、A車がきちんと走行車線にはみ出さず路肩に収まって停車していれば、B車が高速道路上に停止しているA車に気づいて第2事故を起こしていなければ、、、夫が玉突き事故に巻き込まれることはなかったはずなのに、と残された妻の私は幼い娘とともに突然夫が逝ったことで悲嘆に暮れています。

 私達の依頼した弁護士が、A車の運転手とB車の運転手に対し、慰謝料など損害賠償を請求する交渉をしているのですが、両名とも第2事故と第3事故の間にほかの車両は玉突き事故を起こすことなく塞がれていない第2車線を通過できているのだから、第3事故がむざむざ起きてしまったのは専ら夫Cの過失に因るものだと反論し、損害賠償義務を争っています。
 このような玉突き事故の場合、夫の過失割合は何%になるのでしょうか?

Answer

 予想もしない玉突き事故に巻き込まれたご主人の冥福をお祈りします。
上記Qのケースは東京地裁1984/6/26交民集17巻3号822頁という、実際に起きた玉突き事故における過失割合が争点となった裁判例を少し変形してとりあげたものです。

 裁判所は各人の負っていた注意義務と過失を次のように指摘しました。

A車:このような悪天候の状況下で、第1事故を起こしたA車を停車させる場合、ほかのクルマに対する危険をも十分に考慮に入れたうえで停車すべき。
 いやしくも走行車線上にはみ出してはならないのはもちろん、たとえはみ出していない場合でも他のクルマに対して停車車両の存在を明らかにする手段を講じて、後行車に対する安全にも配慮して停車すべき注意義務がある。
しかし、A車の停車は、走行車線にはみ出て、しかも、非常点滅灯は点けていても三角型の停止表示板を設置しないという、注意義務に違反した方法である。

B車:このような悪天候の状況下では危険が高く、また、重大な結果となることが十分に予想されるのであるから、適切かつ慎重な運転が強く要求され、急ブレーキを厳しく慎み十分前方を注視して運転する注意義務がある。
しかし、B車の運転手は、道路状況への十分な配慮を欠いた挙句、急ブレーキをかける羽目に陥ってスリップしたという、注意義務に違反した運転をしていた。

C車:C車の運転手には、制限速度を10km超える速度で運転しており、かつ、前方を十分に注視していなかったからこそ、ほかの車と異なり、玉突き事故を回避できなかったという過失がある。

 そして、第1事故と第2事故はCに対して共同不法行為の関係に立ち、Cは自己の過失分40%を過失相殺した上で、残り60%A及びBに損害賠償請求できると判断したのです。

 ちなみに、A車はBに自己の過失分30%を過失相殺して残り70%損害賠償請求できるし、逆に、B車はAに自己の過失分70%を過失相殺して残り30%損害賠償請求できるし、B車はCの遺族に自己の過失分60%を過失相殺した上で残り40%を損害賠償請求できると判断しています。

 このように玉突き事故における過失相殺の判定は複数の車が関与するため非常に複雑ですので、裁判例の分析が必要です。
 玉突き事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

 

※似たような事案でも、裁判官ごとに過失割合の数値が異なることは、実際の裁判でもかなり見受けられます。各事例で示された数値が絶対的数値であると誤用されないようご注意願います。