交通事故Q&A

高次脳機能障害で、等級評価の際の4つの能力はどう勘案される?

  • 更新日:2016.6.19
  • 投稿日:2016.6.19

高次脳機能障害で、等級評価の際の4つの能力はどう勘案される?

Question私は夫と高校生の子供と3人で大野城市に住んでいます。夜、夫が歩行者用信号が青で横断歩道を渡っている最中、横断歩道横で赤信号停止していた2台のクルマに、居眠り運転の10トントラックがノーブレーキで追突したため、玉突き事故が起きて、もっとも前方のクルマが妻にいきなりぶつかってきました。 
 青信号で横断していた夫は突然のできごとに避けようもなく、クルマに押し出された際、転倒してアタマを強く地面で打ち、外傷性くも膜下出血となり、3日間意識不明となる重傷になりました。
 意識が回復し一命は取り留めたものの、夫の物覚えが極端に悪くなっただけでなく、性格が一変し些細なことで非常に興奮したり暴言を吐いたりと感情のムラが甚だしい有り様です。当然、以前勤めていた仕事に戻ることもできません。
 主治医からは高次脳機能障害と思われるので、後遺障害の等級申請をしたほうがよいと指摘されました。等級評価の場面で、夫が失った脳機能はどう区分され、どのように評価されるのでしょうか?

Answer高次脳機能障害の評価において、労災認定基準には、基本的な考え方が示されています。
20131006132513134

 しかし、別紙5に示されている補足的な考え方の箇所は、個別具体的症例ごとにぴったり当てはめる基準とまでは言い難いです。
 そこで、高次脳機能障害の等級認定においては、3級から12級までの場面は4つの能力それぞれについて、その喪失の程度を組み合わせて、等級評価を行っています。
 なお、1級1号と2級1号については介護(監視含む)を常時あるいは随時要する状態として、4つの能力の喪失の程度組み合わせとは異なる観点で評価されています。
 また、14級9号は他覚的画像所見を欠く場合を想定していることが他の等級認定との明確な差です。14級9号では「わずかに喪失」という程度を想定しています。

ア:意思疎通能力(記名記憶力・認知力・言語力)

   職場において他者とのコミュニケーションを適切に行えるか。

 イ:問題解決能力(理解力・判断力・集中力)

   作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し、適切な判断を行い、
円滑に業務遂行ができるか。

 ウ:作業負荷に対する持続力

         一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているか。精神面における意欲や気分の低下、集中力の持続欠如による疲労感や倦怠感も含めて判断する。

 エ:社会行動能力(協調性)

          職場において他人と円滑な共同作業ほか社会的行動ができるか。突然大した理由もないのに怒るなど、感情や欲求のコントロール低下による場違いな行動の頻度も含めて判断する。

 

  3級3号「終身労務に服することができない」

        →a:4能力のいずれか1つが全部失われた。

                又はb:4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われた。

  5級2号「きわめて軽易な労務のほか服することができない」

        →a:4能力のいずれか1つの能力の大部分が失われた

       又はb:4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われた

  7級4号「軽易な労務にしか服することができない」

        →a:4能力のいずれか1つの半分程度が失われた

       又はb:4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われた

    9級10号「通常の労務に服することができるが、その就労可能な
職種の範囲が相当な程度に制限される」

      →4能力のいずれか1つの相当程度が失われた

  12級12号「通常の労務に服することができるが、多少の障害を残す」

              →4能力のいずれか1つの能力が多少失われた

 

  さて「全部喪失」「大部分喪失」「半分程度喪失」「相当程度喪失」「多少喪失」「わずかに喪失」といわれても、どういう場面がそれにあたるのか、言葉だけでは皆目見当がつかないため、労災認定基準の整理票には、もう少し具体的な基準が設けられています…別紙6
20131006132523319

 例えば、問題解決能力に関して、労災認定必携には「多少喪失」「わずかに喪失」以外について、次のように例示されています。

・全部喪失=課題を与えられても手順とおり仕事を進めることが全くできず、働くことができない。

・大部分喪失=1人で手順とおりに作業を行うことは著しく困難であり、頻繁な指示が無ければ対処できない。

・半分程度喪失=1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、ときどき他人の助言を必要とする

・相当程度喪失=1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまには他人の助言を必要とする

 

  高次脳機能障害の後遺症申請にあたっては、この例示された基準を念頭に置いて、4能力に関する被害者の日常生活の支障をきちんと組み上げる必要があります。
  大切な人が交通事故(人身被害)に遭われ、高次脳機能障害になってしまってお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

お問い合わせリンク


ページトップ