交通事故で加害者が未成年の場合、刑事手続はどう違う?

Question

信号機のない交差点で出合い頭の交通事故被害にあい、入院しています。相手の運転手は18歳の女性でした。相手がスピード違反をしていたか、一時停止線でちゃんと一時停止をしていたかなど、双方の言い分に食い違いがありますので、示談交渉がはかばかしく進みません。
相手の運転手が20歳未満の場合、手続の進め方などに違いがでてくるのでしょうか?

Answer

交通事故の相手運転者が未成年の場合、最終的な示談決着のときには相手本人のサインでは足りず、法定代理人である親権者の同意が要る(民法5条1項本文)という特徴がありますけれども、相手運転者に任意保険が適用されるのであれば、金額をめぐっての示談交渉などの進め方は相手運転者が成人の場合とほとんど違いありません

ただし、事故態様がどうであったかを調査する刑事手続の面では、交通事故の相手運転者が未成年であるか成人であるかでかなりの違いが生まれます理由は、20歳未満の未成年者を捜査する場面では少年法が適用されるからです
加害者が未成年者(法律では性別を問わず少年と呼んでいます、少年法2条)の場合の特徴を、加害者が成人の場合と対照して何点か紹介します。

1、全件送致主義
成人の場合には、たとえ犯罪の嫌疑があると判断される場合であっても、微罪処分(被疑事件を検察に送致せず、刑事手続を警察段階のみで終了させる手続、刑訴法246条但書)や不起訴処分(被疑事実について起訴をせず刑事手続を検察段階で終了させる手続、刑訴法248条)が選択されたりします。
しかし、少年の場合は、犯罪の嫌疑があると判断される場合は、被疑事件がどんな軽微なものであっても全て家庭裁判所に送致されます(少年法41~42条)。

2、観護措置
成人の場合は、犯罪の嫌疑がある場合で、かつ、住居不定とか証拠隠滅もしくは逃亡のおそれがある場合には、起訴されるまでの間、最大20日間警察の留置場などに勾留されることがあります(刑訴法208条)。
しかし、少年の場合は、勾留に替えて、少年鑑別所という場所に、通常4週間、最大で8週間、観護措置という形で身柄拘束されることがあります。

3、刑罰ではなく保護処分
成人の場合は、①交通事故が発生し警察で調査→②検察庁へ送検し追加調査→③検察庁で正式起訴・略式起訴(=罰金)・不起訴の決定→④正式起訴された事件は裁判所で刑事判決、という手順を踏みます。
しかし、少年の場合は、先ほどの③④の内容が【家庭裁判所で審判不開始・不処分・保護観察・少年院送致】と替わります罰金刑はありません。
例外的に保護処分では不適切で刑事裁判が相応しいと家庭裁判所が判断したときは検察官に逆送されますが、交通事故ではほとんどないと思われます。

未成年者の人身交通事故の件数は1年間で3万8841件、そしてそこにおける審判不開始・不処分・保護観察・少年院送致・逆送の比率は33・8%、44・8%、15・4%、0・1%、5・8%と公表されています(平成16年司法統計年報から)。

4、裁判ではなく審判
成人の場合で、正式起訴された事件の刑事裁判は誰でも傍聴することができます(憲法82条1項)。
しかし、未成年の場合は、審判は原則として非公開です(少年法22条2項)。   

    例外的に、故意の犯罪により被害者を死傷させた場合と自動車運転過失致死傷罪の審判が行われる場合に限り、被害者や遺族から審判傍聴の申し出があった場合は、諸般の事情を考慮して少年の付添人である弁護士の意見を聞いて、傍聴を許可することがあります(少年法22条の4)。

   家裁から傍聴が許可された場合ですが、被害者や遺族といった当事者のみならず、その不安感や緊張感を緩和するために、家裁に申請して、私など被害者代理人弁護士の傍聴付添の求めることができます。民事事件を依頼された場合、私が傍聴付添をお引き受けすることはむろん可能です

5、人身事故の刑事記録の入手範囲
成人の場合は、起訴されていなければ実況見分調書のみで、逆に、罰金も含めて起訴されていればそのほか関係者の供述調書や裁判所での証言内容も入手可能と差が設けられています。
しかし、少年の場合は、審判不開始か否かを問わず、事件終了後に、実況見分調書のほか関係者の供述調書も入手可能な運用がなされています(少年法5条の2第1項、少年審判規則7条1項)。この点だけは、加害者が成人の場合よりも民事事件での記録利用を希望する被害者にとって有利な扱いになっています。

交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

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